やぶちゃんの電子テクスト:小説・戯曲・評論・随筆・短歌篇へ
鬼火へ

 

VITA  SEXUALIS   芥川龍之介

 

[やぶちゃん注:最初に一部に割愛改変が行われて公開された1968年岩波書店刊の葛巻義敏編「芥川龍之介未定稿集」の末尾には「(大正一、二年頃)」の執筆推定年が示されている。底本は岩波版新全集第二十三巻所収のもの(1993年山梨県立文学館刊の山梨県立文学館編「芥川龍之介資料集・図版2」の写真版を底本とするもの)を用いたが、漢字表記は「芥川龍之介未定稿集」所収のものと校合して正字に直した。但し、一部、私の判断で「芥川龍之介未定稿集」の稿を採用した箇所がある。そこにはその旨を明記した。本作業の過程で、どうも葛巻氏の所蔵していたものと新全集が底本とした写真版とは異なるものである可能性も視野に入れるべきではないかという気がしてきたことを申し添えておく。底本にある原稿用紙の改頁記号は省略、繰り返し記号「/\」の濁点付きは正字で表記した。「芥川龍之介未定稿集」との差異については可能な限り、原則、当該異同を含む段落の後ろに表示したが(一部多出する異同は纏まった段落の最後に附した)、句読点(底本では句読点が一切ないのに対し、「未定稿集」は一部に句読点が附されている)・マス空け・固有名詞(「未定稿集」では例えば幼稚園の女児の名「藤田」を「FT」等として、登場人物を完全に匿名化しているが、底本ではそれが完全に復元されている)その他分かりきった送り仮名の相違・改行の有無等、本文読解に関わらないと判断した瑣末なものは原則、注記していない。但し、底本は行末に一字空けが来た場合に行頭に一字空けするのを嫌って(段落様に見えるからであろう)行っていないのではないかろうか、という新全集の校閲の不備を今回のテクスト作業で強く感じた。葛巻氏が猥褻物陳列罪を恐れて伏字にした箇所や削除箇所については、一つの時代の変化を伝えるものとして、出来る限り注を附した。
語注については、愚かな自動言語フィルターを配慮して別頁で用意した(別ウィンドウで開いて並置して御覧頂きたい)。
 なお、検索その他でこの頁に来られた方の内、多少とも文学的学究に興味のある方は、上端の
HPトップ及び私のテクスト集のリンク先をまずは御覧頂いた上で再入場されたい。私が単なる卑猥なる趣味性向から本頁を翻刻しているのではないことを御理解頂いた上でお読み頂きたいからである。ただの猥褻趣味で、たまたま本頁に来てしまわれた方は、この頁も、そして――私の総てのHP中のコンテンツもブログも――あなたの興味とは全く無縁であるので、速やかに退場されたい。【2010年10月31日】]

 

 

VITA  SEXUALIS

 

何歳の時だか覺えてゐない 獨りで行つたのか伴れられて行つたのかそれも忘れて仕舞た 兎に角自分の實家へ遊び行つた事がある 其頃はまだ牛小屋があ一つたし 配達と牧夫とを合せて雇人の數も隨分多かつた

その雇人のゐる配達部屋へ遊びに行つて見ると 色の白い頭を行儀よく分けた熊ちやんと云ふのが「坊ちやん いゝものを見せてあげませう」と云つて小形な本を自分の眼の前へつきつけた

木版の鮮な色彩がまづ眼にはいつた それから妙な姿勢をとつてゐる 男女のゐるのがわかつた 男は髷に結つてゐたやうに覺えてゐる 細い白いdelicateな手や足のもつれあつてゐるのが此繪に非常な復雜した感じを與つたやうな氣がした 自分は單なるcuriosityに釣られてもつとよく見やうとした さうすると傍にゐた他の雇人が「馬鹿野郎 そんな繪を小供に見せるもんぢやあない」と云つてひつたくつてしまつた

[やぶちゃん注:「與つた」はママ。【未定稿集】では「與へてた」とある。]

その時に陰部などに殆 注意しなかつたのは事實である 唯極めて朧げな交接と云ふやうな概念が頭のどこかへ流れこんだのにすぎない

序だから書いておくが 熊ちやんは其後娼妓を受出して女房にしてゐると云ふ事である

 

幼稚園へはいつた 其頃は一の組 二の組 三の組と分れてゐて 一組にそれぞれ女の先生がついてゐた 三の組から一の組へ順々に 豆細工なり刺繡なりが 複雜なものになつてゆく 勿論授業は男も女も一緒であつたが運動場へ出て遊ぶ時はきつと男は男同志で遊んだものである

其時同じ三の組に藤田と云ふ女の子がゐた 黄八丈の袂の長い着物を着て白粉を濃くつけてゐた 今から考へると 餘り容貌も美しくない 何方かと云へば丸顏で 其上まるで表情のない顏であつた どう云ふものだか自分にはこの女の子がなつかしかつた 其癖一度も口をきいた事はない 唯 顏を合はすだけである そして殊に寐るときにこの女の子の事を考へて寐るのが 愉快であつた

自分がこの女の子に對して抱いた感情には殆性欲の分子を含まないと云つてもいゝ 唯淡い意識の下に徴な性欲の萌芽を感じただけである

尤もこれと同じやうな感情を抱いた女の子は まだ外に二人ゐる 二の組の時は竹村と云ふ子がそれであつた これは紺飛白の派手な單衣を着て赤い帶をしめた姿を一番はつきり覺えてゐる 瓜實顏のやつぱり あまり美しい女の子ではなかつた 幼稚園を出る少し前には小池と云ふ厩橋あたりの醫者の娘がすきであつた

丸顏の色の黑い 眉の間に黑子のある 組中での御轉婆で 今から考へるときはめて 肉的な表情を持つた女であつた そして自分も亦一番最後にすきになつたゞけに――他の二人がすきになつた時よりも自分が年をとつてゐたゞけに――此女の子に對して抱いた感情の中には 可成性欲が鮮に動いてゐたやうに思はれる

 

二の組の時の受持の先生に安藤先生と云ふのがゐた 色の白い いつも銀杏返しに結つた先生であつた 自分は幼稚園を出るまで此先生が忘れられなかつた 慥か 前齒に金を入れてゐたやうに思ふけれども これは先生として唯なつかしい先生だつたのかもしれない

 

幼稚園で友達になつた男の子に 本間德次郎と云ふのがゐた 親父は總武鐵道の重役で 自分のうちから半町ばかり先きに 大きな黑い門をかまへてゐた 本間は赤い 憲兵のかぶるやうな帽子をかぶつて幼稚園へきた

組中でのあばれ者で自分のうちへ遊びにくると きつと一つづゝ手遊をこはして歸つた 時々泣かされた事があるのにも關らず 自分は本間のうちへ遊びにゆくし 本間も自分のうちへ遊びに來た

本間には兄が一人あつて 英麿と云つた 自分たちが幼稚園の時に丁度小學校の高等科へ通つてゐたが これがいつも大將で 隣りの小林正雄やその弟の庄次郎や自分や弟の德次郎と遊んでゐた

本間の兄さんは 本間の事をポンチと渾名をつけてゐた そしてよく「ポンチほばあやと一緒に寐るのだからばあやとOmankoをするんだ」と云つてからかつた 勿論自分にはこのOmankoの意味がよくわからなかつた この意味を正當に解釋し得たのは 本間の方が先きであつた

幼稚園の一の組の時だつたと思ふ 本間がうちへ遊びにきて 奧の八疊で木馬にのつたり玩具の刀で戰つたりして遊んでゐた そのうちに本間がふいに「君Omankoをしないか」と云ひ出した 自分はそれが何んな事だかしらないながら何となく惡い事のやうな漠然とした感じが頭に浮んでゐたので 「いやだ」と云つて斷つた さうすると 本間はしばらくたつて又「君Omankoしないか」と云ひ出した 自分は又「いやだ」と斷つた 本間はそれから十分ばかり「いゝぢやあないか いや? えいゝぢやあないか」とつゞけさまに勸誘した 自分もとうとう根まけがしたので 漸く「うむ」と生返事をすると本間はすぐ快諾したのだと思つて 「ぢやあ玄關へ行かう」と云つた 玄關は八疊の隣りで一方が壁一方が障子 二方が襖であつた 玄關へはいると 本間はすぐ襖と障子をしめた さうして自分を疊の上へ寐かした 自分は本間が立つたまゝ前をまくつたのを見て 同じやうにした 猿股をはかない頃の事であるから二人とも腰から下の肉體がそのまゝ現れた

[やぶちゃん注:「えいゝぢやあないか」は、【未定稿集】では「え、いゝぢやあないか」とある。]

本間は自分の腿の上に腰をおろしてOmankoをした 二人のZeugungsgliedが接觸するのである

本間は何度も「あゝ いゝ心もちだ」と云つた 自分は僅に觸覺の淡い快感を感じたのにすぎない

[やぶちゃん注:【未定稿集】ではこの段落は、前の段落と読点を介して繋がっている。]

本間は自分の上に跨つてOmankoを幾度も繰返した けれども二人ともZeugungsgliedは少しも勃起しなかつた

其後一度本間が又「Omankoをしないか」と云つたことがある その時はとうとう應じなかつた

[やぶちゃん注:本「幼稚園で友達になつた男の子に 本間德次郎と云ふのがゐた」に始まるパート中の「Omanko」は、【未定稿集】では総て「□□」と伏字にしてある。]

 

本間の兄さんが 自分たちに妙な繪を見せた 幼い時に見たあの繪と同じやうな繪で たゞ之は石版であつた 長い簪をさした女が寐てゐる横に 髷に結つた男が女の首に手をかけながら 寐てゐる所である

前のほど姿勢が復雜でないのと あの時よりは年をとつたのとで 今度はPudendaもよくわかつた

本間の兄さんはこの繪を自分たちに見せたばかりでなく 自分でも同じやうな繪をかいた どうさ引の半紙へ 墨でかいて一寸彩色を加へたのであつた 赤い腰卷の女と裸の男とが重なり合つて來てゐる繪で 男の丈が女よりも低く 男が女の上にゐたので丁度二と云ふ字の形に似てゐた 勿論これにもPudendaが描いてある 本間の兄さんはこれを「ポンチとばあやとがOmankoをしてゐる所だ」と云つた

自分がObscene pintureを見た二度目の經驗は 之である 序に云ふが本間のばあやは六十に近い田舍者の大きな女であつた

[やぶちゃん注:「ポンチとばあやとがOmankoをしてゐる所だ」は、【未定稿集】では「ポンチとばあやとが□□をしてゐる所だ」と伏字にしてある。]

 

ZeugungsgliedMと云ふのも本間に教つた けれども どうしても口に出しては云へなかつた 本間の兄さんは白い 小兒のはく乳かすのやうなものを掌へのせて 自分たちに「Mkasuだぜ」と教へた 自分は前から直接に そのMkasuと云ふものをしつてゐたが 名をきいたのは之がはじめであつた

これは尋常一年の話である

 

尋常二年頃から自分は大野さんの所へNational Readerの一と千字文とを習ひに行つた 其頃大野さんは 東京府の級仕をしてゐた 自分より七つ上で 父親と二人ぐらしである 大野さんは夕方歸つて來る そうして 冬なら火をこしらへて 夕飯を食つて 燈をつけて 御とつさんの歸るのをまつた 阿父さんは一中節の師匠で朝出て 夜歸つてくるのである

その頃大野さんのうちへは日がくれると 岡部と云ふ書生や 前の薪屋の子や建具屋のよんちやんと云ふ子やいろ/\な人が集つた そして 自分の簡單の稽古をしまふとがや/\手ん手に話しをする

此連中は阿父さんが歸つてくると 皆狐鼠々々裡口から歸つて行つた

[やぶちゃん注:【未定稿集】ではこの段落は、前の段落と一マス空きを介して繋がっている。]

何日か 岡部がこんな事を云つた

「阿父さんと阿母さんと 夜何をするかしつてるかい」

自分は「知らない」と云つた 岡部は「上へのつたり」と云ひかけると皆がどつと笑つた

大野さんは「この人の阿父さんや阿母さんはとしよりで 眞面目なんだからそんな事はない」と辨護した

自分は 非常に不快であつた

 

大野さんの所へは中學校の一年生になるまで通つた これも尋常一年位の話しである 大野さんが「西洋人のやり方は珍しい」と云つて 近頃見たObscene Pictureを説明した事がある 男も女も裸體になつて 女が仰向きに臥る 男は 其女の兩足を自分の兩肩にあげて女の腿を抱くそして兩足は女の腹の兩側へのばす 女は兩手で自分の胸の上に枕を抱く それでするのである 女はもういゝ心もちになつて 目をつぶつてしつかり枕を抱きしめる 男もいゝ心もちになつてしつかり女の腿を抱きしめるとかう云ふのであつた

共時自分ははじめてSexual Intercourseに愉悦が伴ふと云ふ事を知つた しかし それが本間が自分に教へたやうなOmankoかどうかはわからなかつた

[やぶちゃん注:末尾の「自分に教へたやうなOmankoかどうかはわからなかつた」は、【未定稿集】では「自分に教へたやうなものかどうかはわからなかつた」とある。]

 

大野さんのところへ行つた時分に やつぱり本間のところへも遊びに行つた

或時本間の兄さんが幻燈會をやつた 會が終つてから餘興だと云つて 厚紙へかいて切拔いた五寸ばかりのSchamgliedSchamrinneとを見せた 前者の上部と後者の中央とを赤く塗つて 他は褐色に彩色してあつた そして 後者の中央には縱に切れ目がはいつてゐる

本間の兄さんは 前者を頭部から後者の切れ目に插入させて見せた そしてまた離して見せた それを繰返しながら「はまつた ぬけた」と云つた

[やぶちゃん注:『前者を頭部から後者の切れ目に插入させて見せた そしてまた離して見せた それを繰返しながら「はまつた ぬけた」と云つた』の部分は、【未定稿集】では「前者を後者に插入して見せ、そしてまた離して見せた、さうして又離してさうしてこれを繰返し見せた」とある。]

これを見て自分はSexual Intercourseと云ふものは 本間の云つたOmankoとはちがつて 單に接觸させるばかりではないと云ふ事をしつた 同時に自分は「はまる」と云ふ語をおぼへた そして長い間 自分は人のまへで この語がつかへなかつた 何となくこの語は Sexual Intercourseに限つて用ゐるやうな氣がしたからである

[やぶちゃん注:「本間の云つたOmankoとはちがつて」と「はまる」は、【未定稿集】ではそれぞれ「本間の云つたのとはちがつて」「ハマル」(カタカナ表記)となっている。]

 

小學校の尋常二三年から自分は 櫻井の利いちやんと遊んだ 麻生だの淸水だの村越だの 田中だの平岡だのが一緒に遊ぶ 櫻井の利いちやんは質屋の子で 自分たちの中の大將であつた そして利いちやんが自分たちの中で一番背が高かつた

[やぶちゃん注:「質屋の子」は、【未定稿集】では「經師屋の子」となっている。]

何時か教室で授業中に机から床の上へ 石筆を落した 頭を机の下へいれてさがしてゐる中に利いちやんの足が見えた 利いちやんは一番うしろの机にゐる そして 自分の机はうしろから三つ目にある 利いちやんは袴をはかなかつた 利いちやんの足が見えると思ふうちに 利いちやんの腿も見えた それから利いちやんの手が見えた 利いちやんは手でSchamgliedをいぢつてゐた

鐘がなつて 運動場へ出た時 利いちやんにその事を云つてからかつたら 麻生が「そんな事を云つちやあ惡いぢやあないか およしよ」と云つた

利いちやんは默つてゐたが少しきまりが惡いやうに見えた 實を云ふと 其頃から自分も Schamgliedをいぢる癖がついてゐたのである 自分は袴をはいてゐたから 袴の下でした 寐る時は掻まきの下でした そしてSchamgliedはいぢれば 大きくなると云ふ事を知つたのであつた

 

其うちに 大野さんのところへ自分の外に英語を習ひにくる人がふへた

それは小出と云ふ牛肉屋の姉弟で 姉は松枝弟は秀之助と云つた 二人とも色の白いむつちりと肥つた子で 弟の方は自分よりもーつ上 姉の方は三つ上であつた

弟は神田さんの小學校用英語讀本の2を 自分と姉とはNational Reader2をつかつてゐた 何のくらひ この授業がつゞいた後だつたか忘れたが 自分と大野さんと松枝さんと三人で散歩をする癖がついた

河岸通りと馬車通りを始終歩いた そしてなるべく人通りの少い暗い通りをあるくのである 三人で歩く外に大野さんと松枝さんと二人で歩くことも度々あつたらしい しかし自分と松枝さんとで歩くことは決してなかつた

柔な女の手の觸覺と 油をつけた髮の香とは此時に覺えたのである 自分と松枝さんとの間には これだけの關係しかすゝまなかつた がそれでも自分の性欲を刺戟するのに充分であつた 自分が夜寐る前にSchamgliedをいぢるとき自分は いつも松枝さんの事を考へた

自分と松枝さんとは始終手紙のやりとりをした くだらない事を書いた紙を大事さうに封じて それを英語の稽古中なり 小學校の運動場であふときなり そつと手渡しするのである その時に人目にかゝらせまいとする用心は 自分のcuriosityを働かす事が多かつた

[やぶちゃん注:「これだけの關係しかすゝまなかつた がそれでも」の部分は、【未定稿集】では、「これだけの關係しかすゝまなかつたが、それでも」となっている。また、【未定稿集】では「自分の性欲を刺戟するのに」の「刺戟」が「刺激」となっているが、これは敢えてこの漢字を採った底本が正しいものと思われる。]

ある日放課後 二三人の友達と うちへ歸るので運動場を門を方へ歩いてくると 松枝さんが手紙を渡しに來た 自分は友達の手前遠慮したと見えて受とらなかつた 松枝さんは渡さうとする 自分はうけとるまいとする とう/\自分が逃げ出した 松枝さんもすぐ追かけたが二三間かけるかかけないのに二人とも石につまづいてころんだ 松枝さんと自分と顏をむき合せて 横に倒れたのである赤い裾の下から松枝さんの白い脛が見えた 友達がやあいと云つて囃す まだ自分が袴をはいてゐたよかつたのである

[やぶちゃん注:「袴をはいてゐたよかつたのである」の部分は、【未定稿集】では、「袴をはいてゐた よかつたのである」となっている。]

其後 大野さんも自分も松枝さんと散歩が出來なくなつた 姉弟とも大野さんのところへ來なくなつたのである そして松枝さんは 小學校を出てしまつたのである

 

その頃父は小さな銀行の取締役をしてゐた その銀行の頭取の 娘がちえちやんと云つて自分よりは四つばかり年下であつた さうして 時々女中につれられて自分のうちへ遊びに來た

ある日 女中と自分と留守をしてゐる所へ ちえちやんが女中をつれて遊びに釆た 主人のゐないのを幸に 二人の女中はいろ/\な事を語り合つて笑つた そのうちに頭取のうちの女中が「御孃さま阿父樣と阿母樣は夜何にを遊しますの」と訊ねた 小さなちえちやんは 御稚兒に結つた首を少しまげて 「とつちやんとね かあちやんとはね これなの」と云つた そして右の手の拇指を人指指と中指との間へはさんで 拇指以外の四指をにぎつて左の手の人指指で 何度もその右手の拇指をつゝついた 「あたし 見てよ」と其上につけ加へて云ふと女中は二人とも 大きな聲でわらつた ちえちやんの母は美しい人であつた

 

高等一年になつた

その頃は當番と云つて 一つ机にすはつてゐるものが二人づゝ休憩時間にも教室にのこつてゐて机の位置を直したり 紙屑をはいたりしたものである

ある時自分は豐永と當番になつた 豐永は顏の細長い色の白い目の大きなあまり美しくない兒であつた

する丈のことはしてしまつたので 人のゐない教室で二人は地理の本を出して一緒に繪を見てゐた 肩と肩とをくつつけて本を見てゐるうちに 自分は豐永と二人で人のゐない教室にゐると云ふ事をせつない程明瞭に意識した さうすると豐永の手がにぎりたくなつた 手をとつた しつかりと抱きたくなつた しつかりと抱いた 頰ずりかしたくなつた 頰ずりもした まだそれ以上の事がしたくつてたまらなかつた 二人とも袴をはいてゐる 自分の袴の下では 嘗つて記憶しない程 Schamgliedが強く勃起した 自分は殆「Omankoをしやう」と口ヘ出して云ふ所だつた 丁度その時に始業の鐘がなつた それから五分たゝないうちに生徒が皆列をくんではいつて來た 自分は殘惜しいやぅな氣がした これが嘗て Sodomyと云ふ事を知らずにゐた自分が 自然に發したSodomyの情である 勿論其時は 又その後もしばらくの間はSodomyが如何にして行はるべきものか と云ふ事を知らなかつた

自分が豐永に求めたのは 本間の教へたOmankoであつた

[やぶちゃん注:「Omankoをしやう」「本間の教へたOmankoであつた」は、【未定稿集】では、それぞれ「□□をしよう」「本間の教へたものだけであつた」であつた」となっている。]

 

父の銀行へ行つた事がある 冬の夜で粉雪のふりさうな寒さであつた 父は外の人々と階下で相談をしてゐたが 自分は父が「二階で用がすむまで待つておいで」と云つたので 父の折鞄を持つて二階へ上つた

二階は四方に飾り氣のない白壁があるばかりで 床も唯赤みかゝつた床板がむき出しであつた 唯裸の瓦斯が黄色くともつてゐる ストーブの暖さが頭をいたくさせる程部屋中を蒸してゐた

自分は單なるcuriosityにつられて 折鞄をあけて見た 中には小切手や紙入や通帳や手帳や新聞の切拔や いろ/\なものがはいつてゐた 其中に小さく疊んだ繪双紙が一枚 目についたので早速出してテーブルの上へひろげて見ると一枚を十二にくぎつて その區劃の中へ一つづゝ畫をかいた木版の極彩色の畫であつた 其中で今でも記えてゐるのが七つある一番始めのは 煤拂ひの所で姐さんかぶりにした女が二人で足をなげ出して腰を下ろしてゐる その女の桃色の腰卷がまくれて 二人ともSchamrinneを出してゐる 次のは珊瑚珠の簪をさした女が仰向きに寐て 足をすくめるやうにあげてゐる上に 裸の男が四つばひになつてしてゐる所である SchamgliedSchamrinneもちやんとかいてある 殊にSchamhaarを著しく長く描いてある その次のは、丹治郎のやうななりをしたやさ男が緋の毛氈をかた椽臺に片膝あげてすはつてゐると紫の振袖を着た女が首に抱きついて兩足が其男の腹にかゝつてゐる これにも二つともかいてある 自分には勃起したSchamgliedが殆ど横にした足と直角をなしてゐるのが可笑しかつた 其次は黑耗繻子の帶をしめた女を 市松模樣の着物を着た男が後から抱きすくめてゐる所である 女は離れやうとして手をのばして足をあげてゐる そのあげた足の間から緋の蹴出しと白い腿とSchamrinneの半分とが見える これにはSchamgliedはない 次は人物が今迄より稍大きく描いてある 厚い蒲團の上に厚い抱卷をかけて その間から仰向きになつた女の顏が見える 花魁だと見えて鼈甲の簪を何本となくさしてゐる 其上に男の顏が出てゐる 女は目をつぶつて眠つたやうになつてゐるが 男は目をあいてしかも口もとに微笑を含んでゐる Zeugungsgeschäftの愉悦を具體的に表したものであらう 次は眉を落した年増が立膝をして煙草をのんでゐる所である 白地の浴衣の前がはだかつてそこからSchamrinneを見えてゐる 最後のは一面に大きくSchamrinneを描いて其前へ手が出してある Schamrinneを女自身がいぢつてゐる所か又は男が戲れてゐる所か一寸見當がつかない 自分は幼い時はよく母や叔母につれられて女湯へ行つた 從つて 子供は大人と達つてSchamrinnehaarがない事はしつてゐる 子供のSchamrinneが唯腹から足につゞく間に一すぢの縱の裂口を存するだけなのをしつてゐる しかし大人のSchamrinneは黑いSchamhaarの外に何も見た事がない そこでこの繪を可成な好奇心で熟視したしかしこれに甚しいexaggerationが施してあると云ふことは 一度もそれを見た事のない自分にも感ぜられる位明な事であつた けれども白い陰阜と紅の陰核とそのまはりのhaarとに施されたexaggerationは反つて人を挑發せしむるeffectに富んでゐた 自分はこの繪を何度もはじめから繰反して見ながら そつとSchamgliedをいぢつた

其中に 父が下で自分をよんだ 自分はこの繪を疊んで元の通りに鞄の中へ入れた

 

芝の實家へ遊びにゆくと 名は忘れたが小さな女の子が來てゐた

自分の幼い弟と遊ぶのである 自分もー緒になつて遊ぶうちに張板を斜に少し高い處から疊の上へかけてその上を代る/\すべつて下りた 何處もこれを反復するうちに自分は 張板の下になになつて見てゐるとその女の子がすべるたびに赤いうらのついた唐ちりめんの派手な着物の裾の下から白いSchamrinneが少し見えるのに氣がついた そこでその女の子を、辷らしては、下に臥て見てゐた そのうちに三人でかくれんぼをする 弟が鬼になるとこの女の子と二人でどこかへかくれる もし夜具戸棚へでもかくれたら 暗いまぎれに この柔かさうな白いSchamrinneをいぢつて見やうとかう考へた けれども之は實行出來なかつた この女の子は色の白い 髮の濃い子であつた

 

これも芝へ行つてゐた時である

弟の子守に鈴と云ふのがゐた 少し雀斑はあつたが 色の白い背の低い肥つた女で自分より一つ年下であつた 何かの話の序に「もう鈴が女になつた 隨分早い」と云ふ事をきいた けれども自分には此女になると云ふ語の意味が明瞭に解し難かつた

其日の夕弟と自分とで風呂にはいつた 其時鈴が「坊ちやんは私が洗いませう」と云つてはいつて來た 幼い女は決してSchamrinneを手拭をかくさない 鈴も幼い女の如くかくさずに湯をくんだり湯にはいつたりした しかし其Schamrinneの形状は自分が一度も見た事のないものであつた それは幼い女のそれの如くSchamhaarを有してゐない しかも幼い女のそれとちがつて單なる裂口以外に其裂口の中央に小さな肉が突起してゐる 其肉の色が紫がゝつた赤い色でその上にすぢが一つ通つてゐる 鈴は之を少しもかくさない 自分が之を見るのが氣の毒に感ぜらるゝ程かくさない

自分は女のSchamrinneがかう變化するのを「女になる」と云ふのだと知つたそして更に發達するとSchamhaarが生ずるのだらうと推察した

 

上瀧のうちへ皆集つて遊んだときの事である

王子の方へ遠足をしやうと云ふ話しが出た 丁度春のことで上瀧の庭には 櫻と椿とが柔な緑の芽をふいた 檜や松の間にさいてゐた 丁度自分たちは五人ばかりゐたがその中の一人が 「王子へゆくんならこれをもつてゆくんだ」と云つた 「これ」と云つたのは ケースの空(カラ)である この空ケースが上瀧の机のひき出しに澤山はいつてゐたのである そして又「ほりにあつたらぶつけてやるんだ」と云つた

[やぶちゃん注:【未定稿集】では、「空」のルビは平仮名で「から」となっている。]

さうすると 上瀧の兄が その友達のほりにあつた話をした 何でも上野の人のあまりゆかない奧の方で ほりが手をつかまへて挑んだと云ふのである それをふりはなしてどん/\逃げた、と云ふのである

自分にはほりと云ふ事が明瞭にわからなかつたが嘗つて聞いた「かまほり」と云ふ語と比較して 多分同し意味だらうと推定した しかし「かまほり」と云ふものがする所業がはつきりしなかつたのだから結局 やはりわからない事になる 唯自分の知つてゐる範圍に於て「Omanko」と同じやうな事だらうと想像するまでである

[やぶちゃん注:「唯自分の知つてゐる範圍に於て「Omanko」と同じやうな事だらうと想像するまでである」は、【未定稿集】では、「唯、sodomyと同じやうな事だらうと想像するまでである」と大きく異なっている。葛巻氏による改変と思われるが、これでは意味がおかしくなる。猥褻性を隠すために甚だしく改悪してしまった例である。]

しかしこれで 明にわからないながらsodomyと云ふものが存在すると云ふことを 比較的慥に記憶したのである

 

其頃 自分は講釋の速記や落語の速記をよんだ 都新聞もよんだし さまざまな小説もよんだ

そして「獸慾」と云ふ語や「春情」と云ふ語や「強姦」と云ふ語や「淫慾」と云ふ語を覺えた 何となくかう云ふ隱微な事を知るのがうれしかつたからである

念佛講と云ふ語や据膳に箸をとると云ふ語をしつたのも 此時であらう

新聞の記事で一番刺戟されたのは 何とか云ふ男が十二三の少女を二人縁日につれて行つた そして御馳走をすると云つて二人を築地の本願寺の境内にある草原へつれこんだ そこへくるといきなり 「いゝ事を教へてあげやう」と云つて一人の少女の裾をまくつた その少女は泣き聲をあげてふりはなしながらにげ出した その男はあとの一人の少女を捕へて草原へ押し仆した そして散々に強姦をした そのあとで鷄姦をした それから泣くのをすかしてそこを出て またどこかの暗い空き地で強姦をした 三度目には又もとの本願寺の境内へ來て強姦と鷄姦とをした 少女のSchamrinneは はげしい傷をうけた とかう云ふのであ

 

高等二年になつた

其時の高等四年に舟戸と云ふ美少年がゐた 色の白い年下の自分が戀しく思ふほど美しい少年であつた その舟戸と同じ高等四年と何とか云ふ男とが運動場で向ひあつて立ちながら 兩方で相手を抱くやうに向ふに帶ぎはにかけて 體の下半部を規則的に前後に動してゐた

[やぶちゃん注:ここの部分、【未定稿集】では、「兩方で相手を抱くやうに向ふ〔の〕帶ぎはにかけて 體の下半部を規則的に前後に動〔か〕してゐた」という異様に丁寧な編者補正が行われている。]

さうすると高等四年の酒井と云ふのが舟戸の肩をたゝいて「冗談ぢやない よせよ」と云つた 舟戸は少し顏を赤くして笑つた

二人共袴をはいてゐたが 氣のせいか 側で見てゐた自分には その前の結目の下が高くなつてゐたやうに思はれる 此時 これがおかまをほると云ふのかしらと思つた そしてそれならあのOmankoと大したちがいがないと思つた

[やぶちゃん注:「あのOmankoと大したちがいがないと思つた」は、【未定稿集】では、「あのHと大したちがいがないと思つた」となっているが、これは一見、所謂、性的行為としての「H」の意で言い換えたようにも見えるのであるが、一つ気になるのは今まで、そのような意味で「H」を芥川が使用していないという違和感である。実は、ここまで【未定稿集】を素直に読んで来ると、そうではなく、先に登場した友人「本間」(【未定稿集】では「H」とイニシャル化されている)のエピソードのことを指すように読めてしまう。葛巻氏はそうした確信犯――本間のエピソードで多出した「□□」=「Omanko」を無意識に引き出させるために――で言い換えたのではないかと推測される。]

 

高等二年の春には 中學校の試驗をうけるので一月二月三月と三月つゞけて毎晩深川の西六間掘にゐた小學校の先生のところへ 算術を教りに行つた この連中は六人ばかりゐたが いつも緑町の上瀧のうちへ集つてそれから出かける事になつてゐた そしてこの連中が皆揃ふまでは笑つたり騷いだりして遊んだものである

その時に上瀧の兄さんもー緒に騷いだ 名は淸と云つて 中學の二年生であつた そして殊に野口とよく騷いだ 野口と相撲をとつて野口を抑へつけた上にのつて 袴の裾をまくつて野口のSchamgliedを皆に見せた事がある

或晩 先生のところへゆく時に上瀧の兄さんが一緒に來た 先生の格子戸の前でわかれて 皆はうちへはいつた それから 九時すぎまで算術の稽古をして 歸る段になると、格子の外に矢張上瀧の兄さんが立つてゐた

上瀧が「淸兄さん 今までまつてたのかい」ときくと「あゝ」と答へた

又一緒に歸つてくると 何時のまにか上瀧の兄さんと野口とが後になつた そのうちに「おゝい」と云ふ聲がうしろでした さうすると 皆「わあ」と云つてかけ出した 人通のすくない 暗い通りだつたから 皆可成怖かつたのである 二三町かけてから立止ると はじめて其時に野口と上瀧の兄さんとがゐないのに 氣がついた 皆で話しながらまつてゐるとやがて二人とも來た 兄さんは右の手でしっかり 野口の頸を卷いてゐた

その時は それで皆何ともしらずにわかれた その次の日 野口が自分にかう云ふ事を 話した

六間堀に 汐時地藏と云ふのがある その寺の前は暗い通りの中でも殊に暗い そこまでくると 上瀧の兄さんはいきなり野口の頸に手をかけて 材木を立かけた隅へひきこんだ そして 地の上へ押仆して袴の紐をといて裾をまくつて その上にのしかゝるやうにして「貴樣はやつて貰ひたいやうな顏をしてゐるから やつてやるぞ」と云つた 野口は尻をまくられたまゝ 「おゝい」と云つた 皆が「わあ」と云つた聲に驚いたと見えて 兄さんは立つてあるき出した

野口も袴の紐をむすんであるき出した だからほられずにすんだと云ふのである

其時に始めておかまをほると云ふ事はSchamgliedと肛門と接觸だと云ふ事がわかつた しかし唯接觸させるだけなのか 又はSchamgliedが肛門へはめるのかその邊は不明瞭であつた

 

杉浦がよく「町田をいまに ほつてやるんだ」と云つてゐた 町田と云ふのは高等二年から同じ少學校へ來た頰の赤い美少年で 杉浦よりも頭のいゝ 杉浦よりも背の高い男であつた 勿論ほれなかつたのちがひない 杉浦はまた 二級下の淸水と云ふ美少年(これが自分の今迄見た中で一番美しい少年である)の首へ後からだきついて 下體を規則的に動しながら「いゝ心もちだ」と云つてゐた とても 本當にはほれないなのだからほる眞似をして 滿足してゐるんだらう 杉浦の馬鹿な事は誰でも知らないものは無かつたのである

[やぶちゃん注:『下體を規則的に動しながら「いゝ心もちだ」と云つてゐた とても 本當にはほれないなのだからほる眞似をして 滿足してゐるんだらう』の部分は、【未定稿集】では、『下體を規則的に動しながら「あゝ、いゝ心もちだ」と云つてゐたのを見たことがある、本當にはほれないものだからほる眞似をして 滿足してゐたんだらう』と正に「美事に補正」されている。]

かう云ふ風に 自分の周圍には男色の空氣が非常に濃厚であつた 殊に一級上の若林と云ふ美少年に自分は はげしく戀してゐた しかし若林とはほんの一面識しかなかつたし 其上まだ「ほる」と云ふ事を正當に理解しなかつたので 唯若林と自分の知つてゐるOmankoとを連想してひとりであこがれるばかりであつた

[やぶちゃん注:末尾「理解しなかつたので 唯若林と自分の知つてゐるOmankoとを連想してひとりであこがれるばかりであつた」の部分は、【未定稿集】では、「理解しなかつたので Wのことを連想してひとりであこがれる ばかりであつた」となっている。]

 

高等三年になつた

ある日 學校で相撲をとつてゐた木村が誰かととつてまけた拍子に あほぬけに仆れると ぱつと裾がまくれてまつ白な腿と其間のSchamgliedとが見えた 自分の隣にゐた梅村と云ふ男が「やあChinbokoが見えた」と云つた

其晩 夢に木村を自分が仰へてゐる所を見た 木村は横ずはりに座つて 前のはだけた間から白い腿が少し見える 自分はその手と肩とを抑へて「いゝぢやあないか 云ふとほりに御なりよ ね」と云つた そして自分のSchamgliedがはげしく勃起したので目がさめた

 

二級下の土屋が「宇敷は三輪の妻君だよ 二人が教室でOmankoをしてる所を見たのだから」と云つた

二級下の加藤が目をつぶつて仰むけに階段によつかゝつてゐると 同じ級の福島が自分の胸と加藤の胸と合はせてその上へ重なつてゐた そして福島の顏には狡猾な笑が漂つてゐた 加藤はしらないが福島はOmankoをしてゐるつもりでゐるのだらう

[やぶちゃん注:「二人が教室でOmankoをしてる所」「福島はOmankoをしてゐるつもりでゐるのだらう」の部分は、【未定稿集】では、「教室で二人がしてゐる所」「福島はしてゐるつもりでゐるのだらうと思つた」となっている。]

 

其中に 自分は湯淺に目をつけた 湯淺は決して美少年ぢやない背の低い 口數の少ない 内氣な子であつた 自分が湯淺をほらうと思□□□純粹な性慾からである 戀愛の分子は一毫も認められない

[やぶちゃん注:「自分が湯淺をほらうと思□□□純粹な性慾からである」は、【未定稿集】では、「自分がYUをほらうと目をつけたのは純粹な性欲からである」となっている。「慾」は底本が正しいと判断して、そちらを採った。以下の「慾」も同様。]

自分は四圍の境遇から判斷して とても自分の家では行はれないと知つた 何でも外でするに限る 人通りのない暗い所ですれば大丈夫だ そこで其條件を具備する場所は第一に露路である 第二に石河岸なり薪河岸なりである 第三に社寺の境内である 自分はこれらのうちから其時に最も適合した場所を選んでしやうと決定した しかも其肝要の「ほる」と云ふ事がどうする事なのか 判然と知らなかつたのは一寸面白く思はれる

それから湯淺をひき出す方法を考へた 第一の時には元德樣の縁日へ一緒に行かうと云つて誘つた

それは湯淺の家のある二つ目から三つ目の元德樣迄は 丁度人通りの極少ない暗い河岸通りで左側は一體に石河岸と薪河岸とであつたからである 所がこの計畫はすぐに駄目だと云ふ事がわかつた それは通りの幅があまり廣いので 河岸へつれこむまでに手間とると 人に怪まれる虞がある そこで手をとつたり 首に手をかけてひきよせたり いろ/\巫ざけながら 空しくSchamgliedを勃起させたのに過ぎなかつた けれども縁日を見て歸る段になると 自分のはげしい性慾は、第二の計畫として 道をかへて露路へつれこまうと試みた

それは半分がた成功して 露路の中途で背後から抱きすくめたりなり 湯淺のSchamgliedに手をふれやうとしたか丁度人の來るけはひがしたのでやめにした そこを出てから二人で立小便をしたが自分は自分のSchamgliedの剛直になつてゐるのに 自分ながら驚いた

 

その日は不滿をこらへて 家へ歸つた 第二の時にはまづ豫備として、湯淺に本を借りた。そして二日ばかりたつて 夜湯淺のうちへ行つて「君に借りた本を返したいから一寸うちまで來ないか」と云つた「今この近所を通つたから一寸よつたのさ 君のところへくるのならあの本も一緒にもつてくるんだけれど」と云つた

[やぶちゃん注:「湯淺に本を借りた」の部分は底本では「湯淺」との「本」の間に数字分の判読不能枠が示されている。【未定稿集】では表記の通り、「本を借りた」となっており、これは葛巻氏による補綴であると思われるが、至当なものであるので、そちらを採った。]

湯淺は何もしらずに 自分と一緒に來た 自分は前の經驗に徴して 露路でやらうとした そして二三度迂り路をして 淋しい露路をぬけては やらうと思つたがどうしてもうまく行かなかつた 一つは自分の臆病ともうーつは 湯淺が長い下ばきをしてゐたからである もし夏だつたならもつと單簡にできたのにちがひないと思ふ

とう/\第三の方法として 自分は寺社の境内を選んだ そして馬車通りから元町へ 囘向院をぬけやうと云つた 二人は細い道を通りぬけて 囘向院の本堂の横へ來た 前にも後にも人は通はらない その上にあたりはまつ暗である 自分はいきなり足がらにかけて湯淺を地の上に仆した そしてその上へすぐに腹ばびにのつた 兩手は湯淺の顏の兩側から土の上へついてゐる 湯淺は仰向きになつて前がいゝあんばびにまくれてゐる 自分は手をいれて自分の勃起したSchamgliedを出して 自分の着物の前をくつろげると すぐ湯淺のはだけた前の處へあてゝ 前後よりも 寧左右へ腰を動かして早くSchamgliedを接觸させたいとあせつた 湯淺は「あゝ 着物がよごれるから」と云つた

[やぶちゃん注:「そしてその上へすぐに腹ばびにのつた」の部分、【未定稿集】では「そしてその上へすぐに〔三字分欠〕のつた」とある。ここは冒頭注で述べた、葛巻氏の所蔵していたものと新全集が底本とした写真版とが異なるものである可能性を感じさせる箇所である。]

自分は「いゝや おかまをほるんだ」と云つた けれども中々目的は達しなかつた それは前に云つた湯淺の下ばきが邪魔したのである 約三分ばかり 自分のSchamgliedは 徒に綿ネルの下ばきの上を擦過した

が 遂に下ばきの間がうまくひらけて 温な柔な湯淺のSchamgliedが 自分のそれとぴつたりふれた 一度觸れる 二度觸れる 三度ふれる 快い肉感に 殆夢中になつた

その時 鼻歌をうたつてくる人の足音をきいた 自分が急いでとび起る 湯淺も起きて立上る 二人は何事もないやうにあるいて其處を去つた

その後一度湯淺とあつたが それを最後として自分のその犧牲は靜岡の中學へ行つてしまつた

今から考へると 自分は何故湯淺と一囘も交渉をしなかつたらうと思ふ

[やぶちゃん注:「今から」の部分は、底本では「□□ら」とあるが、【未定稿集】では上記のようになっている。【未定稿集】を採った。]

湯淺は自分の行爲を判斷すべく 明に餘り無智であつた もししたならば 或は存外容易に應じて そのMを自分にゆるしたかもしれぬ 又それが許された上は そこのOMANKOのみに(自分は湯淺に 「おかまをほるのだ」と云つた しかし自分の行爲は依然としてOMANKOであつた) 慊らずして眞におかまをほる事に到達したかもしれぬ 湯淺は其時十四才である 生理的におかまをほられることの出來得る年である 自分は一囘も交渉を しなかつたのを しみじみ惜しく思つた

[やぶちゃん注:冒頭の「湯淺は」及び「交渉」、最後の一文の「一囘も」は底本では、それぞれ「□淺」「交□」「一囘□」となっているが、【未定稿集】では総て上記のように納得出来る自然な表記となっている。三箇所とも【未定稿集】を採った。但し、【未定稿集】は本段落の中間部「又それが許された上は そこのOMANKOのみに(自分は湯淺に 「おかまをほるのだ」と云つた しかし自分の行爲は依然としてOMANKOであつた) 慊らずして眞におかまをほる事に到達したかもしれぬ」の総てをカットし、且つ、ここで前後を改行している。]

 

其頃自分の動かされた新聞や雜誌の記事は決して少くない

新聞では 本郷邊の下宿屋で 私立學校を出た書生が七八人に酒をのんで騷いでゐたそこへ 十五になる美少年が一人 その下宿にゐる友達を尋ねた來たが生憎不在なので歸らうとすると その廊下を通る姿をこの七八人の連中に見つけられて 是非に酒の席へひきこまれた

[やぶちゃん注:底本では「友達」及び「その廊下を通る姿を」は、それぞれ「□達」「その廊下を通る□□」とあるが、【未定稿集】では上記のように納得出来る自然な表記となっている。【未定稿集】を採った。]

無理に酒をのませやうとする それを斷る それからだん/\酒興がつのると一人其美少年を捕へてかちごになれと云ひ出した そのよかちごと云ふ語に挑撥された一座は悉く立つて この美少年に「おかま」を借すことを迫つた けれども 勿論應じない そこで一人が立つて抱きすくめると一人は顏に新聞紙をかぶせる一人が右の手を抑へ 一人が左の手を抑へる一人が袴の紐をとくと一人が帶をとく一人がズボン下をぬがせると一人が猿股をとる よつてたかつて 次の座敷へひきづりこんで代る/\鷄姦したとかう云ふのである まだ此種の記事を幾つとなく讀だが こゝには畧す

[やぶちゃん注:底本では「酒興がつのると」は、「酒興がつ□□と」となっているが、【未定稿集】では上記のように納得出来る自然な表記となっている。【未定稿集】を採った。但し、【未定稿集】では中間部「この美少年に「おかま」を借すことを迫つた けれども 勿論應じない そこで一人が立つて抱きすくめると一人は顏に新聞紙をかぶせる一人が右の手を抑へ 一人が左の手を抑へる一人が袴の紐をとくと一人が帶をとく一人がズボン下をぬがせると一人が猿股をとる よつてたかつて 次の座敷へひきづりこんで代る/\鷄姦したとかう云ふのである」の総てが「〔数行分削除〕」となって割愛されて、その前文は「この美少年に「おかま」を借すことを迫る」という現在形で終止されている。葛巻氏による削除と改変と思われる。]

 

中學校へはいつた

英語の時間に 教師が「嘗つて小學校で教へた生徒の一人に手のつけられない惡い奴がゐた 所が その男が今日の新聞で見ると 少年に似はぬ大罪を犯してゐる 諸君も小供の時からつゝしめ」と云つた

うちへかへつてから新聞を見ると 中島甑と云ふ中學校の二年生が 強姦罪で訴へられてゐるとかう書いてある

自分の近くにゐる少女の一人を 英語を教へるのを名として 毎日自分のうちへ通はせた そして 家内のものの留守の時に この少女の手足を手拭で縛し 口には猿轡をはめて強姦したのである

もとより脅迫して他言を禁じさせながら 時々又強姦した その上 又他の少女を何とか云ふ明地へつれ出して これは猿轡だけはめて強姦した それからその少女も時々つれ出しては脅迫□□強姦する 少女は二人とも十二三なので 陰部にはげしい傷をうけて小用にも立てなくなつた それから露顯したのである

[やぶちゃん注:底本では「猿轡」及び「脅迫して強姦する」「小用にも立てなくなつた」の部分が、それぞれ「猿□」「脅迫□□強姦する」「□□にも立てなくなつた」とあるが、【未定稿集】では上記のように納得出来る自然な表記となっている。【未定稿集】を採った。]

又其頃よんだ雜誌の記事に ある男が二人の車夫を賴んで人通りのない原で女を姦まうとする所が詳しく書いてあつた

車夫が「旦那に五圓もらつたのはこゝの事だ」と 兩方から女の手を抑へつける 女はさまざまにわびるが堪忍しない 男は女の帶をとく 紅襦袢の紅がこぼれる 女は足を胸まですくめて悲鳴をあげる 男は 片手に女の髮をとつて 片手で女のゆもじの紐をとく そして「さあこれからなぐさむんだ」と云ふ

これと同じく 實感を挑發されたのは 芳年のかいた報知新聞の一枚繪で 六人の男が舟の中で一人の女を輪姦する所である

[やぶちゃん注:底本では「一枚繪で」の部分が、「一枚繪□」とあるが、【未定稿集】では上記のように納得出来る自然な表記となっている。【未定稿集】を採った。]

一人が觸に立つて女の帶をといたのを持ちながら見はつてゐる一人は女にだきついて一人は女の頸に手をかけて女の唇を舐めてゐる一人は女の白い片足を高くもちあげて そのSchamrinneを見て賤しく笑つてゐる 一人は女の手を抑へながら 手をのばしてSchamrinneに觸れやうとしてゐる

一人は片手に女の手を抑へ 片手に女の足を抑へて その股の間へ首をいれやうとしてゐる 帶も紐もとかれた女は 前の開いた紅のゆもじと 肩のぬげかゝつた衿とをたよりに一生懸命に防がうとするけれども ふせぎきれない 畫家がゆもじの皺でたくみにSchamrinneをかくしたのが憎いやうである

[やぶちゃん注:底本では「憎いやうで」の部分が、「□いや□□ある」とあるが、【未定稿集】では上記のように納得出来る自然な表記となっている。【未定稿集】を採った。]

 

其頃同じクラスに 愛甲と云ふ男がゐた 薩間人で何かと云ふと男色の事ばかり云つてゐた 同じクラスの吉川と云ふ男をつかまへて 「かまをかせ」とせがんだのも此男である 「もうぼや/\ときては駄目だが まつ白な□□□ぬときたらこたへられない」と云つたのも此男である どうやら同じクラスの淸水と云ふ男は 關係があるらしかつた

[やぶちゃん注:「薩間人」はママ。【未定稿集】では「薩摩人」とある。【未定稿集】では『「もうぼや/\ときては駄目だが まつ白な□□□ぬときたらこたへられない」と云つたのも此男である』の部分がすべてない(削除注記もない)。そのため、底本の三文字分程の「□□□」(底本では長方形の空欄)は復元が出来なかった。]

ある日愛甲と田中と淸水とよつて三輪と云ふ愛矯のある少年を仆してその上にのつてM鈕をはづしてMを見た事がある

又ある日 愛甲が一級下の香取と云ふ美少年の首に後からだきついて 少な聲で耳にさゝやくと香取が「いやだよ いやだつてば」と云つたのを見た そして 愛甲がまた「いゝぢやあないか 貴樣は……にも借したと云ふぢやないか えゝ おい」と云つてうす笑をしたのを見た

[やぶちゃん注:「と云つたのを見た そして」の部分は、【未定稿集】では「と云つたのを見た――そして」と特異的にダッシュが用いられている。また「貴樣は……にも」の部分も【未定稿集】では「貴樣は××にも」と、特異的な伏字になっている。]

 

其時分に自分の家に 高と云ふ下女がゐた 房州の北條生れの血色のよくない目の少さい女であつたが 自分はこの女が何となくすきだつた このすきと云ふのが説明がゐる 何だかこの女の顏を見ると すぐこの女の毛ぶかいSchamrinneが想像出來るやうな氣がしたからなので 從つて自分の性慾の對象として選ぶべく定められたのである

毎冬の事で毎晩皆が寐た後で この女が炬燵へ當りにくる そしていゝ加減足が暖ると「御休みなさい」と云つて 自分の床へかへつてゆく

ところが大がい 何時でも炬燵で居睡をして 十二時すぎまでなまぬるい炬燵に暖つてゐるのと この女が炬燵に當るのは 兩膝をそろへてやぐらの下へ出すだけで決して足をのばさないのと 自分の床が炬燵にくつついてゐる必自分は蒲團から炬燵へ足をのばしてあたつて寐たのとは、自分に妙計を思ひつかせた

[やぶちゃん注:「くつついてゐる必自分は」はママ。【未定稿集】では「くつついてゐる〔ので〕」と編者による補塡がなされている。また、「この女が炬燵に當るのは」「足をのばしてあたつて寐たのとは」の部分は、底本では、それぞれ「この女が□□當るのは」及び「足をのばして」以下「あたつて」の部分が4文字程度の長方形空欄で、「寐たのとは」となっている。【未定稿集】は以上の通り、納得出来る自然な表記であるので、【未定稿集】を採った。]

                                       」

自分は毎晩は 高がはいると無邪氣を裝つて 兩足を高の膝の上へのせた この女は膝を出すのに腿の⅓までまくつて出すので まづ若い女の肌の感じが快く自分の足に傳る それから徐に高の睡るのを待つのである 睡たと思ふとそろ/\足をのばす もし目がさめてると手でその足をどけるが 睡てゐれば大がいわからない そして足の指を働かして だん/\に内腿へはいつてゆく 腿の⅔位な處には何時でも 着物や腰卷のまくつたのがかたまつてゐて甚邪魔になるが それをうまくどけると もう餘り障害はない 柔な内腿の肉が兩側から段々狹くなつて 足の甲を縱にしても そのむつちりした肉にふれるやうになると もう陰毛のさきが指にかゝる それからもう少しのばすとまづ陰阜に達する 自分は其存外柔いのに驚かれた これまでは屢試みて屢成功したが どうしても核にはふれなかつた

[やぶちゃん注:冒頭、底本では三字分程の長方形空欄、その後の「兩足を高の膝の上へのせた」の部分も「兩」と「膝の上へのせた」]の間に4文字分程の長方形空欄となっているが、【未定稿集】は以上の通り、納得出来る自然な表記であるので、【未定稿集】を採った。]

初はこれがたまらなく面白かつたが こんどはもつと慥にふれて見たくなつた

其中に或日 家内のものが留守になつて 自分と高だけ留守をした事がある 高は炬燵へはいつた そして睡つた 自分もその隣へはいつた そして高が睡るのを見ると 右の手をのばして陰部をさはらうとした ところがこれが存外容易に成功した 自分は指のさきて陰阜を押して見た 陰唇のふちをなでて見た はては大膽になつて 高の手に自分の手をもちそへて 自分のSchamgiledをにぎらせた 自分のは甚しく勃起した 高は知らなかつた

その時から 自分のSchamgliedは一人前になつた 白い粘り氣のあるぶつ/\した青くさいsemensは 幾度か自分の手先をぬらした 自分ははじめて正當に交接の悦を想像し得たのである

 

その時分に 野口男三郎の事件が毎日 新聞につゞいて出た そしてその序に西洋の色情狂の話が出てゐたがそれはかうである

[やぶちゃん注:この段落は底本では前段落との間に空行がないが、底本には前段に最後に原稿の変更を示す記号が附されており、【未定稿集】では空行を設けている。文脈上からも空行があって然るべきところであるので、行空けをした。]

パリで起つた事だと云ふ 其狂人は自ら馬車を驅つて 巧に美しい女を自分の家へひき入れる そして地下室で暴力にまかせて 之を強姦する 思ふまゝに淫慾をみたすと 之を絞り殺して その陰部を抉りぬく それからそれを酒精につけて 保存する

殊にその美しい女の肉ではハムを製造して賣つたと云ふ事である

 

もう一つ自分をしてよんではself abuseをさせたのは いろは文庫の記事である 殊に 和七とお蘭とが炬燵でする所と 定九郎が御民を手ごめにしやとする所とである 前者に於て自分は「面白い狂言炬燵やぐら下」と云ふ川柳を覺えた 酒をのんでから お蘭が もつとこつちへよつてもいゝぢやあないかえと云ふ 和七が 何だか醉つてわからなくなりましたと云ふ ぢやおあたりなと炬燵へおしやる 和七が足を出してあたらないので お蘭が堅くるしいぢやあないかと云ふ 和七は 自分の足がお蘭のにさはるといけないからと云ふ お蘭がおまへがさはらないやうにすると 私の方からさはつてやると云ふ 和七がぢやあかうしますがよう御座いますかと云ふ お蘭がまあつめたい足だねえと笑ふ こゝで囘がきれて次の囘になると「お蘭はうつとりと上氣して ぺた/\と頰にひつつく髮をうるささうにかき上げながら」とかいてある 自分は 前囘の完と後の囘のはじめをよみ合せてその中間を想像するのが樂みであつた

[やぶちゃん注:「定九郎」はママ。【未定稿集】では仇九郎となっている。「お蘭がまあつめたい足だねえと笑ふ」の部分、【未定稿集】では「お蘭がまあつめたい足なんだねえと云ふ」と有意に異なる。]

「つめたい足だねえ」と云つた時に和七は兩足で御蘭の兩足をからむ そしてお蘭をひきよせる お蘭も惚れてゐる和七の事だからすぐ手をまわして和七の帶をほどく 和七も手をまはして お蘭の帶をほどく 下紐をほどく とけきれない中に和七のSchamgliedFUNDOSHIをはづれて勃起する からんでゐた足をあげると 和七の内腿が年増の白いむつちりと肥つた腿をはさむ それから和七が前のはだげた體をお蘭のあほむいた體の上へにぢりのせる 二人とも帶をといてゐるのだから胸と胸とあひ腹と腹とふれる 和七が唾を固くなつたSchamgliedにつけるお蘭もつける ぬれたSchamgliedがやさしくふるへながらHAARの間をSchamrinneに近づく すでに口をあいた大陰唇に近づく もうsemenがにじみ出した龜頭は和七の腰の力につれて優に毛を生じた大陰唇の外部からその濕つた内部へ小陰唇から膣へゆるい快い摩擦と共にはひつてゆく 和七の呼吸もお蘭の呼吸もせはしくなる お蘭の下からもちあげるやうに押す 二人とも身體に汗ににじんでくるし自分もしたいといつもかう思ふ

[やぶちゃん注:この段落は随所に【未定稿集】との相違点、葛巻氏による割愛と思われる箇所が認められる。以下に【未定稿集】版を示すので、参考に供されたい。

 《【未定稿集】版引用開始》

「つめたい足だねえ」と云つた時に和七は兩足で御蘭の兩足をからむ、そしてお蘭をひきよせる、お蘭も惚れてゐる和七の事だから手をまわして和七の帶をほどく、和七も手をまはして、お蘭の帶をほどく、下紐をほどく、とけきれない中に和七のSchamgliedは勃起する からんでゐた足をあげると、和七の腿が年増の白いむつちりと肥つた腿をはさむ、それから和七が前のはだげた體をお蘭のあほぶいた體の上へにぢりのせる、二人とも帶をといてゐるのだから胸と胸とあひ腹と腹とふれる、二人とも體が汗ににじんでくる――自分もしたいといつもかう思ふ

 《【未定稿集】版引用終了》]

後者は暗い森の路で 仇九郎がお民を捕へて口説くと お民が應じない 反つて懷劍をぬいて 刺さぅとする 仇九郎がすぐ奪いとつて「闇を屏風の新枕 かうしてくれる」と抱きたほして 手ごめにしやうとする これはこの記事よりも そこに插入した繪に僅にSchamrinneをかくした湯もじの間から 白い腿を出してお民がもがくのを仇九郎がのしかゝつてやらうとしてゐるのが面白かつたのである

[やぶちゃん注:「懷劍」及び「かうしてくれる」の部分は、底本では「懷□」及び「かうして□□□」となっているが、【未定稿集】は以上の通り、納得出来る自然な表記であるので、【未定稿集】を採った。]

 

大分同じやうな記事がつゞくが川柳で 挑撥されたのがある

   汗になるまで御せめなと騎手の妻

   權助に洗つてからと下女風呂で云ひ

   川に寐る蒲團もたまに小波立ち

   四海波治め〔二字欠〕蒲團浪がたち

   若夫婦時計すゝませ蚊帳をつり

   その當時嫁の浴衣は汗だらけ

   情約は蒲團の上で締結し

[やぶちゃん注:「撥」は底本では「發」であるが、先行する記述に「撥」があり、【未定稿集】でもここは「撥」と特異的に書かれているので、【未定稿集】を採った。「四海波治め〔二字欠〕蒲團浪がたち」は、【未定稿集】では「四海波始めて蒲團浪がたち」とある。]

 

十一才になる男の子と 九才になる女の子がやつて拔けなくなつた はまつたまゝ江東病院へかつぎこんだと云ふ話しをきいた

[やぶちゃん注:【未定稿集】では「十一才になる男の子と、九才になる女の子が江東病院にかつぎこまれたと云ふ話しをきいた」という判じ物のような削除が行われている。]

 

これで中學二年までのVITA  SEXUALISの筆を擱く