郵便局窓口のシュールレアリスト――志賀丈二
      (1957・4・17 藪野豊昭蔵)



その人は郵便局の窓口にいた。売られた切手を挟んでいたパラフィン紙がキャンバスだった。
彼の絵は瀧口修造の書斎にも飾られていた。
私の父の画友にして、私が唯一人真性の日本のシュールレアリストと名指す画家、昨年亡くなった志賀丈二が、若き日に父に贈った、一枚。
(細部がもっと分かる大型の画像があります。御希望の方はメールを下されば差し上げます)




郵便切手の単調なマスプロにたいして、これは奇妙な呪術的デッサンの連鎖。ともあれ事務の窓口が、どのような精神の暗所に、どのような炎の炉につながるものか。志賀丈二はいつも私にいささか衝動的だが挑発的なものをあたえる……………
        瀧 口 修 造



これは1961年11月に南天子画廊で開かれた志賀丈二個展の案内葉書に印刷された、瀧口修造の推薦文の後半部分である(表記はママ)。瀧口修造が個人の個展の案内葉書にこのような文章を書いたケースは恐らく極めて稀なはずである。




                  

鬼火へ